日記

2022-11-19 21:45:00

きっかけは意外なところに…

ある救急出動のことだった。

高齢の女性が動けずにいるって通報で駆けつけると

すごく立派なお宅で、奥へ奥へ案内される…

その部屋は、あきらかに家族から孤立させるために作った

暗く、狭く、異臭のする、まるで物置のような部屋だった…

お婆さんは、失禁・脱糞・食物残渣の布団に横たわり

その周囲には、ゴミなのか汚れた下着なのか食べかけの「何か」なのか汚物なのか分からないほどで

僕らは足の踏み場を探すのが大変だったけど何とか救急車まで搬入した。

「最後に食事はいつ食べましたか?」

…「えーと、う〜んと…朝?」

→あやふやな答えだけど、今はもう夕方だよ!

「おばあちゃん、いつ頃まで元気だったんですか」

…「ちゃんと看てましたから、ちょっと前まで…」

「前って?」

…「昨日かな、朝までは…」

→だから、もう17時過ぎなんだけど!

お婆さんは、目を閉じ衰弱しきって、それでも必死に生きようとして何かを口にしたのだろう

不潔極まりない環境の中で、返事をすることなく横たわり、その身体は冷え切っていた。

僕は、汚物を拭いて、服を脱がして、きれいな毛布にくるんで、「頑張って!」と声をかけながら病院へ駆け込む…

救急外来の廊下で医師が来るまで、僕は思わずお婆さんの手を握っていた。

その時!

話せないと思っていたお婆さんが

「ありがとう、ありがとう…」と言葉を発し

最期の力を振り絞って僕の手を握り返した

くちゃくちゃの顔からは、涙がいっぱい溢れていた…

 

僕は、あの時の手のぬくもりを忘れない。

生きているんだよ、温かいんだよ…

握り返してくれたあの想いも忘れない。

お婆さんが、人に手をかざすことが、こんなに重要なんだって教えてくれた気がする。

その日以来、救急で接する方すべてに僕は手を握り「頑張ったね、心配ないからね」と伝えてきた。

一緒に働く仲間にも、測定機器に頼らず、まず身体に触れなさいと伝えている。

 

リラクゼーションマッサージでは、病気や怪我を治すことはできないけど

つらい部分に手をかざすだけで少しだけ安心できる。

僕は、そんなセラピストになりたい!

幼い頃に感じた、母の手のように…

あのお婆さんが教えてくれたきっかけを活かして。